生成AIに文章を整えてもらったり、画像やPDFを読み込ませたりすると、作業を効率化できます。しかし、「氏名を消せば入力してよいのか」「仕事の資料を送っても問題ないのか」と迷う方も多いでしょう。
生成AIの個人情報対策は、本名を伏せるだけでは不十分です。会社名、日時、地域、注文番号などを組み合わせると、本人や案件を推測できる場合があります。また、学習利用を停止しても、社内規程に反する資料まで入力してよいことにはなりません。
この記事では、生成AIへ入力を避けたい情報、匿名化の方法、画像やファイルの確認点、ChatGPTやGeminiで見るべき設定を解説します。最後のチェックリストまで確認すれば、送信前に何を削り、何を人に確認すべきか判断しやすくなります。
| 番号 | 生成AIで個人情報を守る5つの対策 |
|---|---|
| 1 | 入力する必要があるか判断する |
| 2 | 氏名や固有名詞を削除・置換する |
| 3 | 画像やファイル内の情報を見直す |
| 4 | 履歴・学習利用・連携設定を確認する |
| 5 | 会社・学校のルールと人の確認を優先する |

Contents
生成AIと個人情報の基本を知る
対策を始める前に、何が個人情報に当たる可能性があるのかを整理しておきましょう。氏名や住所だけを見るのではなく、複数の情報を組み合わせたときに人物を特定できないか確認することが重要です。
氏名や住所だけが個人情報ではない
個人情報保護委員会は、個人情報を、生存する個人に関する情報で、氏名や生年月日などにより特定の個人を識別できるものと説明しています。他の情報と容易に照合して個人を特定できる情報や、個人識別符号を含む情報も対象です。氏名だけでも個人情報に該当する場合があります。詳しい判断基準は、個人情報保護委員会の個人情報保護委員会のガイドラインQ&Aで確認できます。
確認するのは、氏名、住所、電話番号、メールアドレスだけではありません。顔写真、音声、位置情報、社員番号、会員番号、予約番号、学校名、部署名、具体的な日時なども対象です。
例えば、氏名を「担当者A」に変えても、会社名、支店名、訪問日、取引金額が残っていれば、関係者には案件を推測できるかもしれません。入力文全体を見て、人物や案件を絞り込めないか確認してください。
個人情報と機密情報は分けて考える
個人情報に該当しなくても、未発表の商品情報、社内会議の記録、契約条件、原価、パスワード、システム構成、研究途中のデータなどは、そのまま入力すべきではありません。
また、自分の情報だから自由に送ってよいとも限りません。入力先のサービスがデータをどう扱うのかを確認し、送信する必要性を判断します。
生成AI全体の基本と注意点は、AIの上手な使い方と注意点でも整理しています。全体像を確認したうえで、本記事の個人情報対策を実行してください。
生成AIへの入力を避けたい情報

何を入れてはいけないか暗記するより、「回答に必要か」「第三者の情報ではないか」「漏れた場合に困るか」で判断する方が実践的です。少しでも迷う情報は、そのまま送信せず、削除や置換を行います。
本人や第三者を特定できる情報
次の情報は、原則としてそのまま入力しない方が安全です。
・氏名、住所、電話番号、個人のメールアドレス
・顔写真、本人確認書類、署名、音声、位置情報
・マイナンバー、免許証番号、会員番号
・口座番号、カード番号、暗証番号、パスワード、認証コード
・病歴、診療内容、成績、人事評価、相談記録
・顧客、患者、生徒、応募者、取引先担当者などの情報
特に注意したいのは、自分以外の情報です。受信メールを丸ごと貼り付けると、相手の氏名、署名、電話番号、過去のやり取りまで送ることになります。
必要なのが返信文の作成なら、「取引先から納期短縮を依頼されたが、品質維持のため断りたい」のように状況だけを要約すれば足ります。
会社や学校から持ち出せない情報
仕事や学校の資料は、自分が作ったものでも外部サービスへ入力できるとは限りません。作成者であることと、外部へ提供する権限があることは別です。
顧客名簿、契約書、未公開の企画書、人事資料、会議録、試験問題、答案、研究データ、ソースコードなどは、組織の規程と契約条件を先に確認してください。
個人情報保護委員会も、事業者が個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の範囲や必要最小限であること、提供先で機械学習に利用されないことなどを十分確認するよう注意喚起しています。
個人情報を含む文章を業務で扱う場合は、個人情報保護委員会が公表している生成AIサービスの利用に関する注意喚起も確認してください。
判断できない場合は入力を止め、上司、情報システム担当、学校の管理者などへ確認します。許可された法人向け環境があるなら、個人アカウントではなく指定された環境を使ってください。
生成AIに個人情報を入れない5つの対策
個人情報対策は、一つの設定を変更して終わりではありません。入力の必要性を減らし、残った情報を加工し、ファイルと設定を確認したうえで、最後は組織のルールと人の判断を優先します。
対策1 入力する必要があるか判断する
最初に「そもそも送る必要があるか」を判断します。生成AIが必要とするのは、作業の目的と条件であり、実際の顧客名や住所ではない場合が多いためです。
問い合わせへの返信を作るなら、元のメール全文ではなく、次の条件だけを伝えます。
・相手:初めて問い合わせた顧客
・目的:在庫切れを伝える
・必要事項:入荷予定は未定、代替品を案内する
・文体:丁寧で簡潔
・避けたい表現:責任逃れに見える言い方
この条件で作成できれば、氏名、商品番号、メールアドレスを送る必要はありません。「便利だから全部入れる」から「回答に必要な最小限だけ入れる」へ変えてください。
メール文を作る場合は、元のメール全文をそのまま貼るより、相手との関係、目的、伝えたい内容だけを整理して入力する方が安全です。具体的な作成例は、AIメール作成の8つの使い方|例文と注意点で確認できます。
対策2 氏名や固有名詞を削除・置換する
入力が必要なら、人物や組織を特定できる表現を一般的な記号へ置き換えます。
・山田太郎 → 顧客A
・株式会社〇〇 → 取引先B
・新宿支店 → 都内の支店
・6月18日午前10時 → 指定日時
・注文番号123456 → 注文番号
・商品名〇〇 → 対象商品
日付や金額が必要な場合は、関係性を保った架空の値や幅のある表現に変えます。実際の請求額なら「約100万円」、特定の日付なら「来週前半」とする方法です。
置き換え後も、地域、役職、珍しい出来事などが重なると人物を推測できる場合があります。第三者が読んでも特定できないか、もう一度見直してください。
対策3 画像やファイル内の情報を見直す
スクリーンショットには、通知、タブ名、アカウント画像、メールアドレス、チャット相手の名前などが写り込むことがあります。写真では顔、名札、表札、車のナンバー、配送伝票、窓の外の景色も手掛かりになります。
PDFや表計算ファイルでは、本文以外にヘッダー、フッター、コメント、変更履歴、シート名、ファイル名が残っていないか確認します。
実際にChatGPTへ画像を送る手順や、画像内の文字を確認する使い方を知りたい方は、ChatGPT画像読み込みの使い方7選|初心者向けもあわせて確認してください。
必要な部分だけを切り取り、不要箇所を削除または塗りつぶしてください。黒い図形を重ねただけでは元の文字が残る形式もあるため、加工後の画像として書き出し、別のアプリで開いて確認します。
ファイル全体が不要なら、必要部分だけを文章に書き起こして匿名化する方が安全です。IPAも、AI利用者が情報漏えいなどのリスクを理解し、最低限のセキュリティ対策を行う必要があると案内しています。
仕事で生成AIを使う方は、IPAのAI利用者のためのセキュリティ豆知識も確認しておくと、営業秘密や社内情報を扱う際の注意点を整理できます。

対策4 履歴・学習利用・連携設定を確認する
生成AIでは、履歴、モデル改善への利用、メモリ、接続アプリを確認します。ただし、設定をオフにしても、個人情報や機密情報を自由に入力できるわけではありません。
ChatGPTの個人向けサービスでは、設定に応じて会話、画像、ファイルなどがモデル改善に使われる場合があります。「設定」から「データコントロール」を開き、「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると、新しい会話は学習に使われません。
最新の設定手順は、OpenAI公式のデータコントロールに関するFAQで確認してください。
一時チャットは履歴に表示されず、メモリを作成せず、学習にも使われません。ただし、安全上の目的から最大30日保持されるため、機密情報を入力しない原則は変わりません。
Geminiでは、「Geminiアプリ アクティビティ」から履歴の確認や削除、GoogleのAI改善への利用に関する設定を管理できます。仕事や学校のアカウントでは、機能やデータの扱いがWorkspaceのライセンスや管理者設定によって異なります。
Geminiが保存・利用する情報やアプリ連携については、Google公式のGeminiアプリのプライバシーハブで確認してください。
メールやクラウドストレージなどとの接続も確認し、使わない連携は解除します。設定画面は変更される可能性があるため、利用時点の公式ヘルプで確認してください。

対策5 会社・学校のルールと人の確認を優先する
個人向けサービスの設定を変更しても、会社や学校の資料を入力できるとは限りません。所属先が許可したサービス、アカウント、データの範囲を優先します。
OpenAIは、ChatGPT Business、Enterprise、Eduなどの組織向け製品では、組織のデータを既定でモデル学習に使わないと説明しています。Googleも、対象となるWorkspace環境では、許可なくWorkspaceのデータを基盤モデルの学習や改善に使用しないと案内しています。
ただし、契約しているプラン、管理者設定、組織の規程が分からなければ、製品名だけで判断してはいけません。
生成AIの回答にも、事実と異なる内容や不要な個人名が含まれる可能性があります。メール送信や資料公開の前に、氏名、数値、日付、引用元、組織ルールとの整合を人が確認してください。
個人情報を匿名化する具体例とプロンプト
匿名化は、生成AIへ送信した後に依頼するのでは遅すぎます。利用者自身が事前に情報を置き換え、その後で文章作成や修正を依頼します。ここではメールを例に手順を示します。
元の文章を安全な形へ置き換える
次の文章をそのまま貼り付けるのは避けてください。
「〇〇株式会社の山田様から、6月20日に新宿支店へ納品予定の注文番号123456について、住所変更の連絡がありました。新住所は東京都〇〇区……です。担当の佐藤さんへ確認するメールを作ってください」
必要なのは実名や住所ではなく、確認メールの目的です。次のように変えます。
「取引先の担当者から、近日納品予定の注文について配送先変更の連絡がありました。社内の配送担当者に、変更が間に合うか確認するメールを作ってください。個人名、会社名、住所、注文番号は記載しないでください」
生成された文面の「取引先担当者」「対象注文」などは、AIの外で実際の情報へ戻します。
短いプロンプトと詳しいプロンプト
短いプロンプトは次の形です。
取引先から配送先変更の連絡がありました。社内の配送担当者へ、変更が間に合うか確認するメールを作成してください。固有名詞は使わず、200字以内の丁寧な文章にしてください。
条件を詳しく指定する場合は、次のように入力します。
目的:配送先変更に対応できるか社内担当者へ確認する
対象読者:同じ部署の担当者
出力形式:件名と本文
文章量:本文200字以内
文体:丁寧で簡潔
避けたい表現:責任を押し付ける表現、対応可能と断定する表現
注意:氏名、会社名、住所、注文番号を追加しない
確認:不足情報は推測せず、最後に箇条書きで示す
詳しい条件を付けても、完成文をそのまま送信してはいけません。実際の納期、担当者、対応条件を人が確認してから使用します。
サービス設定と利用前チェック
同じ生成AIでも、個人向けと組織向けでデータの扱いが変わります。無料か有料かだけで判断せず、アカウントの種類、設定、契約、所属先の規程を順番に確認してください。
有料版なら安全とは限らない
個人向け有料プランと、法人・学校向け契約は同じではありません。ChatGPTでは、個人向けサービスの内容が設定に応じてモデル改善へ使われる場合がある一方、組織向けデータは既定で学習対象外です。Geminiも、個人アカウントと仕事・学校アカウントで条件が異なります。
確認する順番は次のとおりです。
1.個人用か、会社・学校から提供されたアカウントか
2.組織が利用を許可しているサービスか
3.契約プランにどのデータ保護が適用されるか
4.入力予定の資料が許可範囲に入るか
分からない場合は、管理者へ確認してください。
誤って入力したときの対応
誤入力に気付いたら、まず追加送信や共有を止めます。該当する会話やファイルを削除し、共有リンクや接続アプリがあれば解除します。
ただし、画面から履歴を消す操作と、サービス提供者側のデータが即時に完全消去されることは同じではありません。削除や保持に関する公式説明を確認してください。
パスワード、認証コード、APIキーを入力した場合は、削除だけで終わらせず、直ちに無効化または変更します。会社や学校の情報、第三者の個人情報を入力した場合は、情報セキュリティ担当や管理者へ報告してください。
生成AIへ入力する前のチェックリスト
入力ボタンを押す前に、次の項目を確認します。一つでも判断できなければ、そのまま送信しないでください。
・送信しなければ目的を達成できない情報か
・氏名、住所、連絡先、顔、音声、位置情報がないか
・複数情報から本人や案件を特定できないか
・第三者の情報や組織の機密情報が残っていないか
・画像の端、通知、コメント、ファイル名まで見たか
・履歴、モデル改善、メモリ、接続アプリを確認したか
・利用アカウントと契約の種類を確認したか
・会社や学校の利用規程に反していないか
・生成結果を人が確認してから使うか
このチェックリストを保存し、文章、画像、PDFを送る前の共通手順にすると確認漏れを減らせます。
生成AIと個人情報に関するFAQ
ここでは、設定変更や匿名化の後も迷いやすい点を補足します。安全か危険かを一律に決めず、入力内容、サービスの条件、組織のルールを分けて考えてください。
氏名を削除すれば入力しても大丈夫ですか?
氏名を削除しただけでは十分とは限りません。会社名、部署、日時、地域、役職、注文番号などの組み合わせから、人物や案件を推測できる場合があります。
固有名詞を置き換え、日付や金額も必要以上に具体的にしないでください。
履歴を削除すれば入力内容はすぐ消えますか?
画面上の履歴削除と、サービス提供者側での保持や削除処理は同じではありません。例えばChatGPTの一時チャットは履歴に表示されませんが、安全上の目的から最大30日保持されます。
入力後の削除を前提にせず、最初から送信情報を最小限にしてください。
有料版なら仕事の資料を入力できますか?
有料版という理由だけでは判断できません。個人向け有料プランと組織向け契約では、データの扱いや管理機能が異なります。
会社が許可したアカウントか、資料の機密区分が入力可能な範囲かを確認し、不明なら管理者へ相談してください。
まとめ
生成AIで個人情報を守るには、氏名を消すだけでは足りません。まず入力が必要かを判断し、固有名詞を置き換え、画像やファイルの隅まで確認します。そのうえで履歴、モデル改善、メモリ、接続アプリの設定を見直し、仕事や学校では組織のルールを優先してください。
初心者が最初に行うべきことは、実際の資料を丸ごと送るのをやめ、目的と条件だけで質問を作ることです。迷う情報は入力せず、人に確認します。生成された回答も、氏名、数値、日付、引用元を確かめてから利用してください。
次は、ChatGPTの使い方12選|初心者向け速習ガイドで基本操作を確認するか、目的別AI使い分け完全ガイドで作業に合うサービスを整理すると、個人情報に配慮しながら活用範囲を広げられます。
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